嘉副研究室の研究テーマ
 慶應義塾大学・嘉副研究室では、マイクロ・ナノスケールの微小空間の流体の科学と工学の研究に取り組んでいます。サイズと形状を制御したマイクロ・ナノ流路を構築して、その中で1滴よりも遥かに少ない体積aL-pLの流体を制御し、これをセンシングすることにより、通常とは異なる微小空間の流動現象の解明、分子や粒子を個数単位で精密に操作する方法論の創出、化学・バイオ・医療における超微量分析・超精密合成デバイスの創製といった先進的な研究を進めています。

 現在は、分子の集団を巨視的に扱う連続体として極小のナノ空間(10~100 nm)を中心に、以下の研究を進めています。
ナノ空間の流体科学: 光の回折限界を打破する超解像度(nm分解能)の粒子画像流速計を開発して、光の波長よりも小さいナノ空間の流動現象・輸送現象を解明する研究に取り組んでいます。これにより、ナノ空間の工学応用に加えて、生物学における細胞内1分子挙動・機能発現などナノスケールの諸現象の理解に寄与する極小流体モデルの構築を目指しています。
ナノ空間の流体工学: ナノ空間を利用することで数分子レベルにまで微量化される試料に対して、独自の技術と統計力学の原理にもとづき、分子を1個ずつ配列、輸送、反応させ化学処理する方法論の創出に取り組んでいます。また、病変部に超希薄濃度で含まれる生体分子を確実に検出する1分子分析や、目的分子の超精密化学合成に向けたデバイス技術の開発を進めています。
マイクロ・ナノ構造工学: 撥水・撥油性表面や人工細胞膜などの機能性マイクロ・ナノ構造体を創出する研究に取り組んでいます。これらの機能をマイクロ・ナノ流路に集積化して、流体の抵抗低減や超高感度検出など微小空間の流体工学に応用することを目指しています。